ママ留学記@ハーバードビジネススクール

2歳の息子を連れ、主人と2人揃ってハーバードビジネススクールに留学している一家の記録。日々の生活の様子に加え、MBA受験の経験談や、「ワーキングマザーとしての成功」に関する考察を共有したいと思います。

黒人差別とHBSの罪と謝罪

ジョージ・フロイドの死を発端として、現在全米各地で抗議デモが起きている。

黒人差別は今に始まったことではない。

それに対する抗議活動も今まで何度も行われてきた。

HBSの授業でも黒人差別に関するケースもあり、セクション内でも黒人の学生達が主体となってアメリカにおける黒人差別について自身の経験も踏まえ話してくれていた。

アメリカの歴史に根付いた深い闇であり、これまでの歴史を振り返ると、今回の動きで差別が一切なくなることはないだろう。その一方で、各企業や大学などもこの動きをサポートする声明を出しており、「本当に何かが変わるかもしれない」という期待も持ち始めている。

その気持ちが大きくなったのは、先日HBSの学長から送られてきたメールの内容を見たからかもしれない。ジョージ・フロイド事件直後、HBSからは学生向けにHBSとしても黒人コミュニティーをサポートするといった旨のメールが届いたが、その時私の中には「HBSでこれだけ黒人差別について議論しているのに、こんな事件が起きてしまっている。HBSは何も変革をもたらすことができなかったのでは」という疑心が生まれた。そんな中、昨日再度学長からもう一通のメールが届いたのである。その内容に私は少し驚きを覚え、また少しの希望を見出したのだと思う。

 

 

学長からのメール

以下はそのメールの一部の和訳である。

 この数週間、George Floyd, Breonna Taylor, Ahmaud Arbery、そして数えきれない多数の死や抗議デモや人種間の平等が何を意味するのか、ハーバードコミュニティのメンバーと話したり、インプットをもらう機会があった。その中で様々な感情を聞いた。アメリカにおける奴隷制度の廃止、そして第13条、第14条の憲法改正から150年も経つのに、全ての国民に保障されているはずである根本的な経済的、社会的、法的な権利の多くを黒人は享受できていないということに対する苛立ち。変革を謳っていても実体的な結果は何も出ていないということに対する怒り。そして意味のある変革をもたらすことのできる地位にある組織や団体が、その変革をもたらすために声を上げたり、リソースを使わずにきたという事実に対する幻滅。

 

そして彼らの多くがハーバードビジネススクールもそういった組織や団体の一部であると指摘した。そしてそれは正しい。これまでHBSの教職員、学生、スタッフ、卒業生は黒人学生をリクルートしサポートしたり、黒人のビジネスリーダーについて書かれた教材を作ったり、組織や社会の中で人種差別や不正をなくすことができるかという内容の研究を行い、多くの人に広めてきたりした。しかし、この国における根本的な差別をなくすための努力が欠けていたことで、我々の進歩は残念ながら不十分だった。HBSの100年以上の歴史の中で、我々は黒人の教授4人にしか終身在職権を付与していない。MBAプログラムの黒人学生の人数は過去30年間、50人ほどから増やすことができていない。将来の教授のパイプラインである博士課程における黒人学生の人数はどの年をとってもほぼいない状況である。黒人のスタッフの人数も少なく、リーダーシップの地位にいる黒人の職員はさらに少ない。黒人を主人公としたケースや人種による困難を描いたケースや研究はひどく不足している。2年前、African American Student Unionの50周年記念の際に、我々はこの難しい事実を皆で認識したはずだった。

 

そして今日、人種差別に対して我々が最大限戦ってこなかったこと、そして我々の黒人コミュニティーによりよい形で役に立つことができなかったことに対し、HBSのコミュニティーを代表して謝罪を申し上げます。

 

私は早急に解決に向けて前進することを決意した。そしてAfrican American Student Unionも含め多くの学生がこの動きに協力してくれることを知っている。我々は直ちに行動を起こし、厳粛にこの活動にコミットする。

 

我々の計画と行動は3つの柱に注力する。①人種差別に関する理解を深めるための研究や教育を行うこと、②ハーバードビジネススクール内外の黒人コミュニティーを支援すること、そして③人種平等に関してより幅広いビジネスコミュニティーを巻き込むこと。我々は、人種差別を減らすことだけを追求するのではなく、積極的に人種差別反対主義の姿勢を取っていく。

 この後、実際にHBSとして行っていく活動の具体的内容が書かれており、このような活動を通してHBSが黒人コミュニティーと共にいるということを示したいという言葉で終わっている。

何に「これまでと違う」と思ったか

このメールがこれまでの内容と違った点は2つある。

まず、学長が「謝罪」したという点。今までHBSのスタンスとしては「我々も常に黒人コミュニティーをサポートしている」というものが多かったが、今回はHBS内でも黒人職員や学生が少ないといった様々な事実も列挙し、HBSの罪を認め、謝罪したわけである。謝罪せずに、HBSは今までも最善を尽くしていたというニュアンスを少しでも出していたら、学生、特に黒人学生からの信頼を一気に失っていただろう。学校としてこの点を謝罪するのはかなり勇気のいることであったと思うが、今回は不可欠だったのではないかと思う。

 

次に、「人種差別を減らすことだけを追求するのではなく、積極的に人種差別反対主義の姿勢を取っていく。」という文章もパワフルだ。大学側としても色々なステークホルダーがいるので、ある考え(もちろん人種差別反対というのは政治的考えではないことは大前提だが)を積極的に主張することは難しかったのではないかと思う。その点を克服し、明確に言ったことは力強く感じられた。且つ、その言葉通り、具体的なアクションが書かれていたことも、「口だけではない」という印象を与えた。

 

まとめ

コロナの感染が広がり、アジア人への差別行為が増えてきた中、私自身もキャンパス内で差別的な行為を取られひどいショックを受けた。ただ汚い言葉をかけられただけでも相当ショックでその後も人が近づくと構えてしまうようになったのだから、日々自分の命が奪われるかもしれない恐怖を抱えている黒人の方々のことを考えると言葉が出ない。

差別を解消していく上では、マイノリティー・差別されている側だけではどうすることもできない。今、力を持っている人間が動かないと根本的には何も変わっていかない。力を持っている人間が、「差別ってあるけど、まぁ自分は関係ないし、他の誰かが解決してくれればいいや」と考えて何もしないことこそが、差別を拡大させている大きな要因の一つであることに間違いない。

 

In the end, we will remember not the words of our enemies, but the silence of our friends.

 

というキング牧師の言葉がまさにそれを示している。

 

今後、私自身も人種差別を含めた様々な差別がなくなるよう積極的に行動していきたい。